『若恋』榊の恋【完】
―――床に散らばった水晶
その小さな光の結晶がひかると自分の命を救ってくれた。
ひとつひとつ拾い集めてひかるの柔らかな手に握らせる。
「青龍が割れてる…」
水晶の中でもひとつだけ粒が大きく、龍玉を手にし宙を舞う青龍を彫った珠が、見事にふたつに割れていた。
「りおさんがわたしたちを守ってくれたんですね」
「うん」
ひかるの目に涙が浮かんだのを見て、両手で頬を包みこんで浮かんできた涙にくちづけを落とす。
「…ダメ、一也さんが、」
「一也は先に戻りましたよ」
「でも」
「黙って」
腕を広げてひかるの体ごと抱き竦める。
腕の中には柔らかく温かいひかるが水晶を握ったまま抱かれている。
「ひかるはいつも無茶ばかりするんですね」
「えっ?」
驚いて顔を上げた。
「わたしを助けに飛び込んできて傷を負って」
「それは…その、夢中で」
「ひかる」
「はい」
「……『死ぬも生きるも一緒です』覚えてますか」