『若恋』榊の恋【完】




ひかるが大きく瞳を開いて、そして一度瞳をパチパチと瞬きしにっこりと笑った。


「うん、覚えてるよ。死ぬも生きるも一緒だよ」


「……ひかる」



きゅっ。

腕の中に閉じ込めかけがえのないものがここにある。



「わたしが榊さんを守るからね」


身を預けてくるひかるが可愛くてたまらない。


「守られてばかりじゃなくて、榊さんを守れるひとになりたい」

「ひかるらしいですね」

「ひとりでは乗り越えられなくても、ふたりでなら乗り越えられるもの。
守っていけるものがあるならいろんなことを乗り越えて守っていきたい」

榊さんがそばにいてくれるだけでわたしは強くなれるから。



ひかるの呟くような声に胸が熱くなった。


「わたしもですよ」



まだ幼さが残るひかるのどこに誰をもを驚かす強さがあるのだろう。



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