『若恋』榊の恋【完】
「俺がなんだって?」
「若…、」
声の主を仰ぐと若は自分を見ないまま中庭に降りた。
りおさんは背中を包んでくれたまま。
「りおさん、もう離れて」
「いや。榊さんが無茶苦茶しないって約束したら離れてあげる」
りおさんは優しいから。
「無茶苦茶しません」
「本当に?」
「はい。もう大丈夫です」
本当は離れてほしくないとそう思ってるのに言えるはずもないから。
「無茶しない?」
「ええ」
「本当に?」
「はい」
若は中庭から自分が出てくるのを待っている。
肩を包んでいた温かさがはなれてく。
「もう大丈夫です」
息を吸って立ち上がる。
「もう大丈夫ですよ」