『若恋』榊の恋【完】
「ひかる、腕を出してください」
「え?わたしは大丈夫だよ」
青龍の水晶を握りしめている左手を身を捩って隠す。
「押さえてても血が滲んでましたね」
「このくらいは大丈夫だもの。平気」
「ひかるが平気と言ってもわたしが嫌なんです」
ぐい
「あ、榊さん!」
隠していた左手を掴みあげて若佐が結んだハンカチにもうひとつ重ねて結んだ。
「痕が残ったらどうしてくれるんですか」
「…ごめんなさい」
「痕が残ったとしても、ひかるを愛してますがね」
左手首の切れた傷は薄く残るだろう。
自分を庇って出来た傷にハンカチごとくちづけた。
「無茶はもうしないでください。寿命が縮みます」
「ご、ごめんなさい」
「ひかる」
「…はい」
「―――愛してます」
「うん」
ふわりと微笑んでくれたその口元に顔を寄せる。