『若恋』榊の恋【完】
ひかるから甘い香りがしてくる。
夏の花を思わせる香り。
「ひかる」
指でそっと髪を櫛けずりもう片方の手でひかるの顎を捉える。
「ありがとう」
誰も傷つけずに。
自分も傷つかずにいられたのはひかるのおかげだ。
ひかるがいなかったらみんなが命を落としていた。
「ひかる…ありがとう」
柔らかなくちびるが弧を描くのを見て、そのくちびるにキスを落とした。
甘い花の香り。
ひかるという花は周りを幸せにしてくれる。
「ありがとう」
ありがとう
―――そっと呟いた