『若恋』榊の恋【完】
函館へ
「若、ただいま戻りました」
先にひかる奪還の一報は入れていたが屋敷に戻ると玄関口で若が柱にもたれて立っていた。
「ヤツは?」
「そのまま逃がしました」
「そうか」
若が軽くため息をつき柱から身を起こした。
「榊、おまえがそう決めたんならそれでいい」
「はい」
「親父から預かったものは?」
「……抜きました。血を吸うことはありませんでしたが封印は破りました」
「それをどうするかだな」
「組長に隠さずにお話します」
「そうか、そうしてくれ」
ポン。
肩を叩いて若がスッと横を過ぎていった。
それだけですべてを受け入れていく。
前にいたひかるの腕をちらりと見て、苦笑いしただけだ。
「榊、成田を呼んだぞ」
仁がすました顔で振り向いた。
「ひかるの腕を診せればいいし」
「そうですね」
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