『若恋』榊の恋【完】
―――強くて優しい。
「女の子はおしとやかがいいんでしょうけどね」
「わたしはひかるのように芯が強くて優しいひとが好きですけれど」
「あら、ノロケね」
りおさんはクスクス笑う。
「りお、どこだ?」
若が奥でりおさんを呼ぶ声が聞こえて。
「あ、榊さん、また後でね」
目配せして若のところへと戻っていった。
その後ろ姿を見送り、
ふう。息をついた。
「おまえも風呂入ってこいよ。埃まみれだぞ」
「仁、」
「疲れた顔してるぜ」
「…ひかるの手当てを見届けてから入りますよ」
「愛するひかるが心配ね」
仁がくくっと笑い、
そして一瞬にして真顔になった。
「妹を助けてくれてありがとうな」
「違います、わたしは何もしていない。
ひかるがわたしを救ってくれただけです」
先を歩くひかるを見ると、ひかるも振り向いた。