『若恋』榊の恋【完】



「榊さん、成田さんが深い傷じゃないからシャワー浴びてから処置するって。」

ひかるがいつも通りの明るい笑顔を見せた。


「そうですか。よかった」


改めて胸を撫で下ろす。

隣にいた仁がいきなり目を輝かせた。


「ひかる、これからシャワー浴びるんだろ?」

「うん」

「ひかる。榊と一緒に風呂入ってこいよ」

「!?」

「やだ、仁お兄ちゃんったら」

「マジで話してんだよ。その腕じゃ髪が洗えないだろ?」


ひかるを見ると顔を赤くして耳まで赤い。


「それは…そうだけど」

もじもじして上目遣いに見上げた瞳と視線がぶつかった。

「榊、髪洗ってやれよ」

「それは…」


戸惑ってひかるを見ると大きな瞳が恥ずかしそうに細くなった。



―――ひかるの髪を洗う



「ひかるがそれでいいのなら」






< 315 / 440 >

この作品をシェア

pagetop