『若恋』榊の恋【完】



「さかき、さん?」

「ひかるがそれでいいのなら」


ひかるを引き寄せて髪を一筋掬いくちづける。


「あの、うん。…いいよ」


耳まで真っ赤なひかるがモジモジする。


「ほら。よかったな榊」


くくっ。
仁が意味深に笑って背中を叩いていく。


去って行った仁の後に残されたのはふたり。


ひかるの髪を洗うだけだと自分に言い聞かせるのに、鼓動は早鐘を打つ。


「ひかる、行きましょうか」

「あ、うん」


足が縺れてうまく歩けないひかるを支えるように歩き耳元にこっそりと囁いた。


「嫌なら無理しなくていいんですよ」

「違うの、嫌とかじゃなくて、あの…恥ずかしくて」

首を竦めるひかるの横顔がまだ朱に染まっている。

恥ずかしそうにしてるのを見るのも可愛い。

部屋に入りドアを背中で閉めるとそのままひかるを抱き寄せた。



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