『若恋』榊の恋【完】
まだ足りない。
ひかるが足りない。
ぎこちなく応じてくるキスに、更に深く掘り下げてキスを求める。
「…んっ、」
息が上がり、
ひかるが潤んだ瞳を開いた。
「…いいよ」
一言呟いて、そのまま身を寄せて腕の中で大人しくなった。
「好き」
「わたしもですよ、ひかる」
失うかもしれなかったものを掻き抱いて離さない。
一年前には若より大事なものができるなんて思ってもいなかった。
若のために命をかけ、場合によっては命を捨てると思っていた気持ちは、ひかるを守り一緒に未来を歩いていくという前向きな気持ちに変わってきている。
若とりおさん、そして誰よりもいとおしいひかるを守りたいと思う。
孤独から救いあげて、今の自分を作ってくれたみんなを守りたいと思う。