『若恋』榊の恋【完】
「わたしは、りおさんとは」
「いや、そうじゃなくてお前の気持ちが聞きたい」
真っ直ぐにぶつけてくる漆黒の瞳が本音を言えと告げている。
「わたしは、…好きですね」
「!」
明らかに動揺した若の表情が。
「嘘は言いません。わたしはりおさんが好きです。ただ」
「―――ただ?」
「それが家族的なものなのかはわかりません」
「妹に重ねて見てるってか?」
「それもわかりません」
「時間が必要ってことか」
ひとり納得していた若はタバコを一本取り出した。
反射的に癖でZippoを差し出す。
火をつけて若が煙を吐き出した。
「だとしても譲る気はないからな」
「若らしいですね。そう思ってるのになんで行動に移さないんです?」
「驚かせるだけだろ?」
「無理やり自分のものにして逃げられるのが怖いだけでしょう」