『若恋』榊の恋【完】
北海道へ行く約束をし、着替えを済ませホールへ行くと、仁と成田が待っていた。
「遅かったな」
ふたりが顔を上げた。
「すいません。身体に他には痕がないか見てたもので」
「ふうん。で。大丈夫だったんだろ?」
「ええ、腕だけですね」
「なら、いいな」
どれ?
成田が腕捲りをしてひかるの腕をみた。
「縫う必要もないな。テープを貼るからしばらくは剥がすなよ。傷痕残らねえようにするからな」
消毒薬を塗ると切れた部分に当てた。
「この程度で済んでよかったじゃねえか」
「まあ、そうですね」
「よかったな」
「ええ」
「仁お兄ちゃん、成田先生ありがとう」
「どういたしまして」
仁と成田がすぐに席を立った。
「またな」
「仲良くやれよ」
じゃあな。
仁はポンとひかるの頭を叩き、成田は上着を肩に引っかけると、背中越しに手をひらひらさせてドアの向こうに消えた。