『若恋』榊の恋【完】
ふたりの榊
東北新幹線で青森に着き、青森から函館まで海峡列車に乗り移動した。
ひかるは数時間の長旅に疲れを見せることもなく、窓ガラスから見える景色に目を輝かせた。
「お姉ちゃんも一緒だったらなあ」
「無理を言ってもダメですよ。りおさんは身重なんですから」
「うん。わかってるけど………あんまりにも景色がいいから。これ見たらお姉ちゃんすごく喜ぶのになあ」
窓から見えるのは緑の中を流れていく間に垣間見える海。
「きれいだね」
「若とりおさんにも見せたいですね」
同じく窓を覗き込む。
長い海峡トンネルを抜けると輝く海。
「函館に来た時、お父さんたちもこの景色見たのかな?」
「どうでしょうね」
「ホントにきれいだもの」
ふたりで見た初めての景色は、忘れられないほどだった。