『若恋』榊の恋【完】
終点函館に着くと、ひかるの両親が改札口で待っていた。
「お母さん!」
「ひかる!」
「お義父さん、ご無沙汰してます」
「どうだ?元気で暮らしてるかい?」
ひかるとお義母さんが手を取り合って喜んでるのを見て思わず頬が緩んだ。
が。
すぐに顔を引き締めるとお義父さんへ頭を下げた。
「すいません。実はひかるに怪我を負わせてしまいました」
「あ?元気そうじゃないか。どこを怪我したんだ?」
「左の腕が切れてしまいました。すみません」
「あ?あの絆創膏か?」
ひかるの左の腕には包帯が巻いてある。
お義父さんはちらりと目をやり、そんなことかと笑った。
「顔に傷を負ったならともかく、話したいことがあると電話で言ってたから、もっと違うことで話があるんだと思ったよ」
自嘲気味な苦笑いを溢して頭を掻いた。