『若恋』榊の恋【完】



「てっきり……」

「てっきり?」

「子供でもできて、その報告かと、あはは」


そっか誤解だったかと、妙に納得をしている。


「いえ。誤解と言うわけでもないんです。約束したことを守れなかったので。それも話そうと思ってました」


殴られてもいい。
ひかるを大事に思いながらも、お義父さんとの約束は破ってしまったのだから。

後悔はしていないが、約束を破ったのは事実だ。

殴られても当然だ。



顔を上げて真っ直ぐに告げた。



「榊さんは後悔はしてないんでしょう?ひかるもあの様子じゃ後悔はないらしいし」

「後悔はしてません。ひかるもないと思います」

「それなら。多少の早い遅いがあってもいいじゃないか。榊さんがひかるを大切に思ってくれているのはわかってるから」


顔色も変えず穏やかに話する口元には笑みさえ浮かべている。



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