『若恋』榊の恋【完】
気持ちがだんだん落ち着いてくる。
若に聞かれていたことがかえってよかったのかもしれない。
もう気持ちに貯めているものがないのだから。
「もしわたしが本気でりおさんを若から盗りたい時には遠慮はしませんよ」
「―――そん時は受けて立つだけだ」
ニヤリ若が口角をあげた。
若は誰にもりおさんを渡したりはしない。
若が本気になれば自分は相手にもならない。
わかってる。
「若、ひとつ、手合わせ願えませんか」
「突然なんだ?」
「これからする勝負でわたしが勝ったら、りおさんと1日デートする。若が勝ったらりおさんには手を出しません」
「………いいだろ」
若が素振りのための竹刀を二本手にして、そのうちの一本を自分に渡した。
「手を抜くなよ」
「若こそ」
「俺はそんな器用なことできねぇ」