『若恋』榊の恋【完】
「気をつけて行ってらっしゃい」
どこに連れて行きたいのかわかっている様子でにこにこ笑って手を振ってくれた。
「どこに行くの?」
助手席から暮れていく空を見上げる。
「まだ、内緒です」
「榊さんったらそればっかり!もう!」
拗ねて頬を膨らますところがまた可愛いらしい。
「もう少し走ればわかりますよ」
目的の地まで向かう。
坂道のカーブをゆっくりと上がって行く。
「もしかして……」
「ええ、わかりましたか?」
ひかるのむくれていた顔が一転してワクワク顔になる。
坂道を上がりきり駐車場に車を停めると、ひかるが歓声を上げた。
「うわあ、すごい!」