『若恋』榊の恋【完】
天には満天の星。
そして。
見下ろすと函館山からの百万ドルの夜景。
どこまでも広がる光の帯。
「―――きれい」
風に吹かれて冷たくなるひかるの肩にそっとカーディガンを掛けた。
「榊さんありがとう」
隣に並ぶと、ピタッと体をくっつけて寄り添ってくる。
「こんなにきれいな夜景を榊さんと見れるなんて幸せだよ」
「わたしもですよ」
体を寄せてくるその背中に腕を回し包みこむように抱き締める。
「いつかまた、ここに来ましょう」
「うん」
「今度ここに来る時にはふたりでなく3人かも知れませんね」
「え?」
「……いえ、わたしの独り言です」
一瞬、きょとんとしたひかるの反応が可笑しくて、回した腕に力が入る。
笑いが込み上げる。
「え、と、……榊、さん?」
「なんです?」
「榊さん、もしかして……あの、」
「なんです?」