『若恋』榊の恋【完】



夜景をみて、写真を撮った後に、レディースルームに行ったまま戻ってこない。

駐車場に停めた車の中でしばらく待ったがまだ来ない。

かれこれ15分は経過している。



「遅いですね」


腕時計を見るともう8時だ。

心配になってひかるの携帯に電話を掛けると助手席のボードの上で鳴り出した。




持って行かなかったのか。



携帯を持って行かなかったことで、急速に頭の中は冷えていく。



迷ったか?

いや。けれど迷うようなところでもない。
ここは函館山だ。
レストランはあるが、周りには他の建物などない。
迷うわけがない。


「まさかですよね」


とりあえず車から降りて、辺りを捜した。



はじめはもしかしたらと不安に思うだけだったものが、焦りへと変わっていく。

捜す足は次第に速くなり、終いには走って捜していた。



カップルだらけの函館山でひかるを見つけられない。


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