『若恋』榊の恋【完】
「待ってたぞ!」
「え?」
「あ?」
一瞬のうちに凍りつく。
わたしを抱き抱えてたのはアゴヒゲを伸ばした熊のような大男。
「は、離して!」
「なんだ?おまえは誰だ?」
抱き上げたのは熊のような大男の方なのに、覗き込んでマジマジと眺めると後ろにいた榊さんを振り返った。
「榊原、この女はなんだ?」
ゆっくりとわたしを下ろしてそばにあったソファーに座らせた。
「俺はおまえに言われた通りに函館山で車に女が乗り込んでくるのを待ってただけだが?」
榊さんが榊原と呼ばれて、熊のような大男の後ろにあるソファーに座り足を組んだ。
「俺はその女をおまえの言う通りに連れてきてやっただけだ」