『若恋』榊の恋【完】


車を出して彼女の案内で市街地に入るとすぐに車を停めた。


「ここが彼の家です」


指差す方を見やると、ぐるりと生け垣に囲まれた立派な屋敷が見えた。
大神の家と似ている。


「電話がまだ繋がらなくて……」


彼女が携帯を握る間、屋敷の中の様子をうかがってると数台の黒塗りが正面へ入っていった。




「あ!元太?あのね、え?」

やっと繋がった電話はどうやらすぐ切られたらしい。


「親父が来たからまた後で頼むって切られてしまいました」

彼女は困惑している。

「何かあったのかもしれませんね」

「今の入っていった車にお父さんが乗っていたので、強引に見合いを進めるためか、彼女を見に来たんだと思いますけど」

「見合い、ですか?」

「お父さんがごり押ししてくる見合いが嫌だって言われて恋人のフリをしてくれって頼まれたんです」

「……」

「だから、」

「あなたはその幼馴染みが好きなんですね?」

「えっ、」

彼女が驚いた顔をした。


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