『若恋』榊の恋【完】
「違いましたか?」
「え、あの。違わないけど……」
俯いた。
彼女はその幼馴染みが好きなのだ。
だから彼の恋人役を引き受けた。
好きでないなら極道の恋人役など受けたりしない。
「だったら行きましょう」
大事に思うなら取り戻す。
正面から堂々と。
彼女が頷き、一緒に車から降りた。
見合いなんて冗談じゃない。
見合いの真似事でも許せない。ひかるは渡せない。
「待て。何者だ?」
正面から乗り込もうとして屋敷内に一歩足を踏み入れて肩を掴まれた。
「邪魔はさせません」
掴まれた肩をスルリと滑らし外して反対にその腕を捻り上げた。
「くっ、」
どこまでも邪魔をするというなら容赦はしない。
「通してください。屋敷の奥に大事な人がいるんです」
「痛っバカ、やめっ!」
「通してもらいます」