『若恋』榊の恋【完】
ひとり肩を押さえて踞る。
「危害を加えるつもりもありません。ただ屋敷の奥にいる人に会いたいんです」
「おまえ、何者だ?」
不穏な気配を感じたのか車止めの方からふたり現れてひとりは踞る仲間を庇うようにして立ち、もうひとりは上着を脱ぎ戦闘体勢を取った。
「待ってください。元太さんに会いにきたんです」
「あ、吹田さん。なんで、」
戦闘体勢を取った男が驚いた顔をして後ろにいる彼女を見つめた。
「とにかく通してください」
彼女も前に出る。
目を白黒させた男の動きが止まったままだ。
「話があるから通して」
「それは―――」
出来ないと言われる前にその男の後ろを取り、首の裏に手刀を叩き込んだ。
崩れるようにして倒れた。
「悪いのですが、急ぎますので」
「やめろ、戦争する気か」
「わたしは屋敷の奥にいる彼女を取り戻したいだけです」