『若恋』榊の恋【完】
「ただの見合い話ではないでしょう?」
「……へえ、鋭いな。わかるのか」
「どこの組もどこの世界も同じようなものです。彼女を巻き込まないでください」
「ほう?あんた、榊と言ったっけか?俺が怖くねえのか?組のモンだってわかってんだろ?って、言うより、ここへ乗り込んでくること自体恐ろしくねえのか?」
そう榊原は揶揄して顔を歪めた。
「あんたどこの組のモンだ?」
「!!」
正座していたふたりが即座に反応して腰を浮かせた。
それを目で制して榊原が顎をしゃくって見せた。
鋭い眼光が刃のようだ。
「言え。あんたはどこの組のモンだ?」
半歩後ろにいる彼女も息を飲んだ気配がした。
「わたしは大神物産の榊です。大神組のと名乗った方がわかりやすいかもしれません」
―――大神組
ここではできれば名乗りたくなかった。
敵と見なされたら、組にも若にも迷惑がかかる。