『若恋』榊の恋【完】
「……大神組の?」
榊原の頭の中で全国の極道勢力図を広げているのがわかる。
大神組と言えばその世界では5本の指に入る。
「大神組の榊?」
ふーん。
相手に不足はないと舌舐めずりをして笑う。
「大神組の?榊原さん、これが本当なら事を荒立てればマズイですよ」
「煩いな。黙ってろ」
ピシャリと拒絶され両脇に控えているふたりが息を詰めた。
「大神組か。道理でここに平然と乗り込んで来れるわけだ」
「今は大神組は関係ありません。わたしの大切なひとを迎えに来ただけです」
「ほう?」
「通してください。連れて帰ります」
「今すぐは無理だな」
あくまでもここを通す気はないらしい。
前に立ち塞がり一歩も引かない。
堂々と立つ姿は威厳を感じさせた。
「元太と話させて!」
「それも無理だな」
「どうして?」