『若恋』榊の恋【完】
「親父どのが彼女と話をしている」
「!」
「隣組の娘との縁談を覆した娘を気に入ったらしいしな」
「……」
間違えられたまま彼女のフリをしなければならないひかるをすぐに助け出さなければ。
榊原を睨み付け脇を通りすぎようとして、控えたふたりに立ち上がり様に阻まれた。
「ここを通すわけには参りませんので」
「簡単には通れると思うなよ」
榊原がにやりと笑んだ。
「通さないと言うなら力ずくで通るまでです」
手を掛けようとした控えのひとりの腕を捻りぐらりとした体勢を地に沈めた。
もうひとりも羽交い締めされる前に投げ飛ばす。
「ほう。やるね」
自分と同じ顔をした榊原が愉しげに口笛を吹いた。
「榊原、邪魔はさせません」