『若恋』榊の恋【完】
受け取れないままいたら榊原が受けとれと押し付けてきた。
「親父の気持ちだ」
それは有り難いが受け取るには重すぎる。
「いいから持っておけ」
榊原が受け取らない自分の代わりにひかるの小さな手に握らせた。
「持ってな」
「でも…」
ひかるが戸惑って自分の顔を見上げる。
「ひかるが持っててください」
自分ではなくひかるに。
ひかるがもらうならそれでいいと思う。
「いつか何かの役に立つかもしれんしな。何かあったら儂に言え」
親父が笑い、息子、若衆、榊原を従い車止めまで見送ってくれた。
「後で病院に行ってください。肋骨は確実でしたから」
榊原の骨を遠慮なく折った。
息をするだけでもその度に痛むはずだ。
「別に構わねえよ、こんくらい…」
「なにを言ったってこいつらは言うこと利かんでな」
病院にはいかないだろう。
行ってもバンド固定、痛み止めと湿布だ。