『若恋』榊の恋【完】
―――たった数時間
ひかるを腕の中に取り戻すまでの時間。
思い知らされた。
失えないもの。
誰にも渡せないもの。
二度と手放せないもの。
胸の中に抱きくるめるまで周りをいくら傷つけても構わないと思った。
自分の命より遥かに重い存在だと改めて認識した。
同じ世界の屋敷に乗り込むなんて、ひとつ間違えばひとりだけの問題ではなくなるのに、すべてはひかる。
ひかるの二の次だった。
「……榊さん?」
気がついたらブレーキを踏んでいた。
「どうしたの?榊さん。あの、」
心配そうに覗き込むひかるを思い切り引き寄せた。
「ひかる」