『若恋』榊の恋【完】
あの時。
ひかるが自分の代わりに指を切り落とすと躊躇いなく短刀を握った時。
ひかるには一生敵わないと思った。
こんなに鮮やかな魂を持った女にはもう出会えない。
―――愛しくて
―――狂わずにはいられない
「さか、き、さん?」
壊れるほど胸に抱いてもまだひかるは自分のものじゃない。
「苦しいよ、榊さん…」
細い肩を折れるほど抱き締める。
1ミリの隙間もないように。
すべてが自分のものと同化してたらいいのに。
いっそのこと食らい付いて血と肉もすべて自分のものであればいいのに…
「ひかる…」
言葉にならない。
失いたくない。
離したくない。
壊したくない。
―――けれど、自分のものにしたい