『若恋』榊の恋【完】
「若、仁か毅に代わってください」
電話遠くで若と代わる毅の声が聞こえた。
「毅、何があったんです?」
物事を冷静に判断できる毅が若の傍らにいてくれるのはありがたかった。
若の慌てぶりから焦りが強くなるが、毅がいてくれる。
「りおさんが、出血したと……」
「なに?どういうことですか?」
「わかりません。いつもは冷静な若が取り乱して。話にならないんです」
「りおさんは?」
「二階の自分の部屋にいるようです」
具合でも悪くなったのか?
あるいは転んだりしたのかもしれない。
「りおさんをお願いできますか?」
二階の部屋に上がることは許されていない。
それは誰であっても同じで、せめて電話が回せれば。
「待っててください」
「頼みます」
電話は若の携帯を切らずにいてもらう。
二階の入り口でりおさんを呼ぶ毅の声が響いた。