『若恋』榊の恋【完】



「りおさんに繋がりますか?」

まだ叫んでいる毅はりおさんと繋がらないまま時間が過ぎていく。

「だめです。聞こえないのか、出てきてくれません」

毅の声は緊迫していく。


「どうしたらいいですか?」

毅の低い声が木霊のように響いた。

「どうしたら、」

「わかりました。今すぐ戻ります!」


この時間にはもう帰るには間に合わない。
飛行機は飛ばない。


「おねえちゃんに何があったの?」

「まだわかりません。帰りましょう!」


不安そうなひかるを見ていられなくて目を反らす。


その時、
いきなり成田の顔が閃いた。


「成田、が、」


そうだ。
成田がいる。
若はりおさんを男だからと言う理由で診せなかったが、本来腕の良い医者だ。

りおさんの一大事に一番身近にいる信用できる医者と言えば成田しかいない。


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