『若恋』榊の恋【完】
気を取り直して毅に告げる。
「毅、成田に連絡をいれてください。りおさんの体に異変があったと伝えれば飛んでくるはずです」
あ。
毅が電話口で声を上げた。
この緊急時は医者の成田に任せるしかない。
「聞こえましたか?成田にすぐ連絡を!わたしもすぐに戻ります」
時間はかかるだろう。
けれど、朝を待つ気にもなれない。
今すぐにもどらなければ。
「わかりました。成田を呼びます」
「わたしもすぐ戻ります!」
若の着信を切り、ひかるの惑う顔を見る。
「急ぎ戻りましょう」
しかし、函館から屋敷には戻るには時間が掛かりすぎる。
「くっ、」
若の慌てぶりからりおさんの体の異変が心配だ。
もうすぐ生まれてくる御子をみんなが心待ちにしていたのに、何があったのか。
どうすればいい。
―――いったいどうしたら