『若恋』榊の恋【完】
ワンコールで出たのは吹田さんだ。
「もしもし、榊です。すいませんが緊急で組長に取り次いでもらいたいのですが」
悠長なことを言っていられない。
向こうが何かを言う前に組長にお願いしなければ。
早くなんとかしなければ。
「このまま待っててください。すぐ傍におりますので」
切羽詰まった声が聞いたのか吹田さんが元太の近くにいたらしい組長とすぐに代わった。
「どうした?早速喧嘩にでも巻き込まれたのか?」
笑えない冗談だ。
「組長。すぐに向こうに発てる飛行機、……なんでもいいです。何かありますか?」
「ん?ないとは言わねえが、なんかあったのか?」
脅えを含んだ声が見透かされている。
「うちの若のところで、」
「なんかあったんだな?」
途中で言い澱むと組長の声音が変わった。
眉をしかめてるであろうことが容易に想像できた。