『若恋』榊の恋【完】
「―――なぜ、そう思うんです?」
車のシートにはりおさんがひかるちゃんに寄りかかるようにして、買い物で疲れてくうくう寝息を立てている。
りおさんが完全に眠って起きそうにないと思って、ひかるちゃんは切り出した。
「榊さんを見てるとわかったの」
「?」
「わたし―――お姉ちゃんの身代わりでいい。だから」
「何を言いたいんです?」
「―――わたし、」
「その先は言うのはやめた方がいいですよ。わたしは分別のある大人じゃない」
予防線は張った。
「榊さんはお姉ちゃんが好きなんでしょ?いつだって榊さんはお姉ちゃんのことしか見てないもの」
「静かに。眠っているりおさんが起きてしまいます。すぐそこの公園の駐車場に車を停めるので、その話は車を降りてからに…」
山田児童公園の駐車場に静かに車を停め、ひかるちゃんと外へ出た。