『若恋』榊の恋【完】
まだ涙目のひかるを抱き寄せる。
「わたしはひかるが大切なんです」
失えないものがここにある。
「榊、さん、湿布を」
「まだいいです。このままで」
「だめだよ、こんなに腫れてるのに」
肩はボロボロでひかるを支えるのも限界だ。
けれど、離せない。
狂おしいほど大切で離したくない。
「このまま少しだけ」
ひかるを抱き締めていたい。
その震える肩を支えていたい。
「離したくないんです」
「榊、さん」
「壊れてもいい。しばらくこのままで」
ひとは大切なものを守るためなら躊躇いなく命をかけるだろう。
自分にとってはひかる、君だった。
「―――愛してます」
何度口にしても足りない。
ひとをここまで愛せるなんて思いもしなかった。
若と共にりおさんに出会い、そしてひかるに愛されるまでは。