『若恋』榊の恋【完】




「―――愛してます」



この数ヶ月で自分はみんなに救われていた。

りおさんが里桜の死の呪縛を解いてくれた。

ひかるが愛してくれたから未来を歩んでゆける。

若が背中を押してくれなかったなら、自分はずっと独り孤独と苦しみを抱えてただろう。



「わたしも榊さんが、好き」


胸に顔を埋めてくるひかるを力一杯に抱き締める。



「好き」



小さな声がくぐもって聞こえる。
腕の中から甘い香りがする。
華奢で細い指が背中に回る。



「ひかる…」



艶やかな黒髪を撫でてくしけずる。
手に体にひかるの感触がある。



「ひかるを抱いていいですか」

「でも、肩が、」

「平気です。このぐらい」


スッ。

ひかるを掬い上げて横抱きにしてベッド中央に下ろした。


「榊さん」



ひかるの泣き顔が見える。

肩を負傷してひかるに泣かれたのは辛い。




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