『若恋』榊の恋【完】
ふたりが初めて結ばれた特別な場所。
忘れられない想いが詰まっている場所。
あの夜があったから、今のふたりがあるのかもしれない。
「白無垢でわたぼうしって素敵だよね。一生に一度だもんね」
りおさんは若を幸せそうに見上げてる。
若もりおさんから玲央坊っちゃんを抱き取り3人は自分のことのように喜んでいる。
自分の理想の家族が目の前にある。
微笑ましく見ていたら、声がして横の襖がスッと開いた。
女将が両手をついて、顔を上げる。
「榊さん、時間になりましたので。大神さまもどうぞ」
「ありがとう」
「嫌だわ。榊さん。ありがとうって言うのはわたしの方なのに。あ、と、それから」
女将が懐から一枚の封筒を抜き差し出した。
「函館の元太さんていう方から、お祝いが届いております」
「元太?」
「ええ、届けにきた方を見てびっくりしました」
女将が笑った。
どう見ても榊さんにしか見えなかったんだもの。