『若恋』榊の恋【完】



式が始まる時刻だ。



若とふたりで屋敷内に戻り、ひかるの両親、父母に挨拶をした。

父も義母とも以前のような冷めた関係ではない。
里桜が亡くなって10年の溝も自分の思いを口にすることで家族の絆を取り戻すことができた。

これもりおさんとひかるのおかげだった。

自分の思いを口にしなければ伝わらないと背中を押してくれたから……



「よかったわ。家族だもの―――」


ハンカチで目頭を押さえる義母の背中を見つめる。

里桜を失ってから家族がバラバラになっていたが、月日は溝を埋めてくれた。


「幸せになってね」

「はい」

「たまには家にも顔を出せよ」

「はい。ふたりで行きます」

父は義母の背を支え満足そうに頷いた。





「幸せになれ。それが家族の願いだ」




―――幸せになれ







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