『若恋』榊の恋【完】
―――幸せになれ
運命の歯車は組長に預けられ、若と出会ってから回り出した。
「組長、若、今までありがとうございました」
深々と頭を下げる。
「これからもうちの若い衆を頼むぞ」
「はい」
「榊、若佐と会ったひかるが喜んでたぞ」
「そうですか。よかった」
よかった…ひかるとちゃんと向き合えたんだ。
自然に笑みが浮かんだ。
若も笑った。
「榊がいなかったら俺はずっと人を信じることが出来ずにいただろう。礼を言うのは俺だ」
「若、」
「ありがとうな。これからもよろしく頼むぜ」
「―――若、」
胸に込み上げてくるのは若と出会った頃のことだ。
食べては吐き出すを繰り返し痩せ細っていく自分に、「死ぬのは甘えだ」と、張り倒されたこと。
「おまえの体は俺のものだ。痛め付けることは許さない」と、告げられた日を。
あれから10年。
常に若と共にあった。
「幸せになれ」
―――幸せになれ