『若恋』榊の恋【完】






―――幸せになれ



自分がどんなにかみんなに支えられて生きてきたかがわかる。


独りじゃなかった。

仲間がいた。

孤独ではなかった。

気づけば。
組長、留恵さん、若が、仁が。そして毅や前広、一也、拓也みんながいてくれた。



勢揃いした皆の笑顔がこの場に揃っている。





「りおさん、ありがとうございました」


「ふたりで幸せになってね」

「はい」




静かに回した腕を解き、りおさんは若の隣に腰を下ろした。




時間だ。

古い柱時計が刻を告げた。




同時に、縁に沿った障子に影がふたつ映る。

影は縁に座り、そして音もなく障子が開いた。




白無垢、わたぼうし姿のひかるが両手を縁につき頭を下げていた。

介添人が先に立ち、ひかるの白い手を取って立ち上がらせる。




しん。


静寂。

刻が止まる。





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