『若恋』榊の恋【完】
衣擦れの音が。
さらさら
さらさら
皆の前をゆっくりと歩き、隣に腰を下ろすと厳かに式が始まった。
組長の温かい言葉や、若のお祝いの言葉をいただいてさらに胸が苦しくなる。
喉が震えて、熱い塊が込み上げてくる。
握る扇子に力が入る。
歪んでくる視界。
「幸せになってね、お兄ちゃん」
限界まで視界が霞んだ時に里桜の声が聞こえた。
「!」
『わたしね、お兄ちゃんが大好きだよ。だから、幸せになってね』
幻かもしれなかった。
すぐ傍に里桜がいた。