『若恋』榊の恋【完】
「盃を」
三三九度の盃をひかると飲み干すと盃に涙が落ちた。
ひとしずく。
「榊さん、」
「わたしは幸せです」
気がつけばひかるも泣いていた。
りおさんを愛してその恋は実ることがなかったこと。
実らぬ恋をひかると付き合うことでまぎらわそうとしたこと。
そして次第に惹かれていく自分を責め続けたこと。
好きになる前に離れようとして、すでに愛していることに気づいたあの日。
「死ぬ時は一緒です」
ひかるのためなら死ねると初めて告げた日。
あの日。
ひかるとの恋が始まった。