『若恋』榊の恋【完】



車に戻るとりおさんはまだスヤスヤと座席に丸まって眠っていた。

あどけない寝顔で、その閉じた睫毛に触れたいとさえ思う。



りおさんの眠りの邪魔をしても可哀想なので助手席にひかるちゃんを乗せた。



「榊さんはお姉ちゃんのこと」

「わたしの女になるって言ったのはひかるちゃんでしょう」



りおさんの前で、自分がりおさんを好きなんでしょう?と聞かれるのは嫌だった。
先手を打ってひかるちゃんが自分の女になると宣言したことを思い出させる。




「わたしを愛してくれるんでしょう?」

だったらもうりおさんの話もしてはいけない―――




威圧的な言い方にひかるちゃんは黙った。



「そう、いい子ですね」

にっこりと笑う。



「今日からわたしの女になるならひとつだけ守ってほしいことがあります」




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