『若恋』榊の恋【完】



噴水が夕暮れで染まり冷たい風と共に足元に吹き付けた。





―――ん?




噴水の中から何か縄のようなものが出ていた。



「縄?」



まさか?

噴水の中に手を突っ込んで縄を手繰ると大きな石に結わえられていた。

その石に続く縄は岸壁へと繋がっている。





「榊!!!」


血相を変えた若が噴水の飛沫を浴びながら叫んだ。



上着を脱ぎ捨て岸壁へと走る。



若が必死で掴んでいた縄の先には制服のまま縄で縛られて海に晒されている少女の姿があった。

塩水を被り生きているのか死んでいるのか、その白い顔をみたばかりではわからない。

渾身の力を込めて引き上げる。


冷たい冬の海に投げられ半分潮水に浸かっていた体は氷のように冷たかった。








「ひかるちゃん!」




揺さぶっても頬を打ってもぐったりしたまま瞼を開かない。




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