『若恋』榊の恋【完】
「ひかるちゃんしっかり!」
紫色になったくちびるが微かに動いた。体がガタガタと震えている。
冬の岸壁に吊るされ、潮水の中に浸かっていたのだから生きてるのだけ発見が早かったと思いたい。
「今すぐに病院へ連れていきますから!」
縛られてるひかるちゃんの縄を駆けつけた仁から借りたナイフで切った。
ブチブチ
ひかるちゃんの上の制服を脱がせさっき脱いだ自分の上着ですっぽり包んで抱き上げた。
「若、」
「俺が運転する」
「仁、」
「成田に電話しとく」
「前広、」
「榊さんこれを使ってください」
ずぶ濡れのひかるちゃんを包むタオルが用意され冷えきった体を足の先まで包み込んだ。
小さな体の命の灯が消えかかっている。
このまま体温が戻らなければアウトだ。
「ひかるちゃん!」