『若恋』榊の恋【完】
ひかるちゃんを抱き上げ車へと走る。
「若、車内の温度を上げてください!」
「もう上げてる。成田のとこに行くぞ!」
成田病院は先代の組長の時から世話になってて、警察沙汰なものまですべて任せている。
「ひかるちゃん、しっかり!」
冷たくなってる体を擦って体温をあげようとするが上がらない。
冷たくなった頬に、くちびるに息を吹き掛ける。
「…さ、かき、さん」
うわ言のようにひかるちゃんが弱々しい声で呼んだ。
「今すぐ病院へ、」
「…さ、か、きさんが事故に遭ったって…聞いたの…」
焦点の合わない瞳で見てひかるちゃんは「よかった」って胸を撫で下ろした。
「……ぶ、無事だったんだね、…よかった…」
すう。
「ひかるちゃん、目を開けて!」
眠りに就こうと瞼を閉じるひかるちゃんに頬を打った。