『若恋』榊の恋【完】
「…い、痛い」
容赦なく頬を張りひかるちゃんの命を繋ぎ止める。
「わたしの女になるって言ってたでしょう。ならないまま逝くつもりですか」
ひかるちゃんの指がピクッと反応を示した。
「…さか、きさんの女?」
「そうです。忘れたんですか?」
少しだけ反応を示した瞳に光が灯る。
「わたしを愛してくれるんじゃなかったんですか?」
「………」
その言葉に鋭く反応をして震えるくちびるが笑みを作った。
「さか、きさん、やっとわたしを見てくれた」
「―――何を言ってるんです?」
「…ありがと」
海で凍えたひかるちゃんがコトリと首を垂れた。
「ひかるちゃん!しっかり!」
成田の所まであと数分。
間に合ってくれ!
死なせないでくれ!
―――そう叫んでいた。