『若恋』榊の恋【完】
奥の処置室に入ると、顔色に赤みが差したひかるちゃんの横顔が見えた。
くちびるにも薄い色が戻り、その手を握るとさっきの凍りつく冷たさはなかった。
「榊、よかったな」
「成田」
「もうちょい水に浸かってたらヤバイとこだった。発見が早くてよかった」
「…ああ」
「しかしあれだな。イタズラされてなくて幸いだった」
「イタズラ?」
ぴくっ。
体が反応する。
イタズラ?
ヤられるってか?
「幸いヤられた形跡はない。必死に抵抗したんだろう。体のあちこちに痣はあるがヤられてはいない」
「………」
「不幸中の幸いだな。ヤられてたら命はなかっただろう」
「………」
どす黒い感情が胸の底から沸き上がってくる。
ひかるちゃんの手を握ってる腕に力がはいる。
くそ、龍神会のやつら!!
―――許さない!