『若恋』榊の恋【完】


ひかるちゃんの眠ってる横顔にも叩かれたのかうっすら跡がある。

その頬に指を伸ばすとピクリと睫毛が揺れた。

程なくして目が開いた。



「さか、きさん?」

掠れたような声で名を呼ばれたら胸が絞られるような切なさがした。


宙を捉えそしてゆっくりと首を巡らして見た。



「よかった。榊さんが無事で…」

「わたしのことは大丈夫だから。―――ひかるちゃんは騙されたんだよ」



簡単に誘いに乗るような文句を、自分が事故に遭ったと連れ出されたらしいことはさっきの会話でわかっていた。

確かにひかるちゃんを拐うには一番効果がある文句だろう。



「………」

返事はなかった。

そのかわりに顔を背けた。


「わたし…もう汚れてる」




溢れるようにいきなりひかるちゃんの瞳から涙が流れた。




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