『若恋』榊の恋【完】
ドクン
ドクンドクン
怒りで身体中が強張る。
ひかるちゃんの白い横顔を汚した男がいる。
龍神会を潰したがうまく逃れた残党が無防備な彼女をまた狙ったのだ。
二度も拐われて命の危険に晒されてる。
「わたし…もう汚れてる」
「違う、何もされなかった。必死に抵抗したんだろう?」
「…だって」
「医者が違うと言ってるから大丈夫だ」
「だって」
「大丈夫だよ。こっち向いて」
それでも向こうとしないひかるちゃんを待つ。
恐々とこっちを向いたその額にくちびるを寄せた。
「もしも、―――汚されたとしても、気持ちはかわりませんよ」
「………え?」
ひかるちゃんの瞳が丸くなった。
「だから大丈夫です」